東南アジアにリソース投下している理由
今回のブログではOmise の創業期から東南アジアに注目する理由について書きたいと思います。
私が東南アジアに移住してから、現在までの間に東南アジアの環境は劇的に変化しました。
2013年、タイに移り住んだ当初は、インターネットバンキングは普及しておらず、銀行口座を保有する人も、ECサイトから実際に物を買うのも極少数のユーザーのみでした。
そこで、共同創業者と思い付いた事業が、たった3ステップでECサイトを立ち上げる事のできるプラットフォーム「Omise」でした。誰もが簡単にオンライン上で「お店(Omise)」を立ち上げ、運営することができるプラットフォームを構築することで、東南アジアでE-commerceを普及したいという想いで開発に勤しみました。
初期メンバーとなる6名ほどの社員と共に、それこそ24時間、週7日間費やし、作り上げていきました。
しかし、ECプラットフォームを作る上で私たちが追い求めていたネットショッピングにおける最高のユーザー体験を届けるために、最も重要な部分を担うチェックアウト時の「決済フロー」の部分で大きく躓きました。その頃タイでは安全でシームレスな顧客体験を実現できるオンライン決済システムがなかったのです。
結果、より大きな問題であった「決済」の問題を解決するために事業をピボットし、オンライン決済システムを開発することになりました。それが、今の「Omise Payment」への進化の根底にあるストーリーです。
2015年に正式ローンチした、Omise Paymentは劇的な速度で成長していき、中小企業での導入を伸ばしました。タイにおいてはスタートアップ企業に「どこのオンライン決済システムを使っているの?」と聞くと、ほとんどの企業が「もちろん Omiseだよ」という答えが返ってくるほどに短期間で成長することができました。
しかし、タイのマーケット自体まだ「クレジットカード」でのオンライン決済が浸透しておらず、多くの人々はE-commerceを単なるデジタル化されたメニュー(オンラインで見て、電話して店に買いに行く、もしくは電話で注文するという私にとってはおかしなユーザー行動でした。でも大原則は「ユーザーが常に正しい」を優先。)としてしか捉えていませんでした。そのようなマーケットで、いかに良い決済システムを作っても、ニーズが高くならない状況だったのです。
そこで、コンセプトとして、開発者が簡単にオンラインで登録、導入できる安心でシームレスなオンライン決済システムというコンセプトは維持しつつも、ターゲットをすでに支払い方法としてクレジットカードやデビットカードを多く使う顧客を持つエンタープライズにシフトしました。一例を言うと、大手携帯会社に焦点を置き、顧客が足を運んで各支店のカウンターで携帯電話料金を支払うというアナログな方法しかなかった決済フローを、携帯電話からクレジットカード・デビットカードを使って支払いができるよう、決済方法をデジタル化することで、一気に事業を成長をはかりました。
エンタープライズの決済方法のデジタル化に注力した結果、2016年から2017年の1年間で成長率は10x (1000%)を超えました。
そして、2017年には タイで最も支払いサービスプロバイダーとしての歴史が長く、当時2番目に大きかった決済事業のPaysbuyを買収し、さらにそこから6ヶ月で3x成長することができました。
Omise acquires online payment business Paysbuy from Thai operator Dtac — TechCrunch
こうして私は日本を飛び出し、Omise 含めるグループ会社SYNQAはマーケットの荒波に飲まれながらも自社をマーケットの成長に合わせることで各国特有の文化を持つ東南アジアで生き延びています。
そうした中、東南アジア諸国は急速に成長し、Fintech 領域も躍進してきました。リープフロッグ現象の勢いはとどまるところを知らず、タイは世界で初めて国全てのQR決済企画 (Prompt Pay) の統一を果たした国にもなり、携帯電話番号さえあれば互いにどの銀行であっても2ステップで送金ができます。また400万以上の店舗で利用可能で、それこそ屋台の小さなお店でさえもキャッシュレスでの支払いが可能です。
いまだに25%の外食店舗でしかクレジット決済が行えない日本と比べても圧倒的と言えます(参照)。この流れは、東南アジア全体に浸透してきておりシンガポールのPaynowやその他 Ewalletプレイヤーの台頭はその流れの象徴とも言えます。
今や、銀行を介さずとも銀行と同様の機能を簡単に自身のスマートフォンから利用可能なのが東南アジアなのです。6億5千万人ほどの人口がいる東南アジアは次なる中国やインドと言われています。
年間の一人当たりのデジタル消費は2025年には$429ドルになると言われており、$278B ドル(30兆円超)のマーケットになります。参照
これは日本のECマーケットを凌駕する数字となります。